フィルムのビネガーシンドローム ― 2008年10月30日 00時00分00秒
やまろ様に以前教えて戴いた、ビネガーシンドロームについて載っていた写真工業2008年6月号をようやく借りた。やまろ様、情報ありがとうございました。
ビネガーシンドローム(Vinegar Syndrome)とは、フィルムの酢酸臭を伴う劣化のことらしい。それで、筆者の松本徳彦氏によれば、
この劣化をともなう酢酸臭(ビネガーシンドローム)は、温度24℃、相対湿度50%の場合、約30年で始まり、30℃、50%で約15~20年、35℃、70%では約6~7年で起こるといわれている。
フィルムに異常があるかどうかは、原始的な方法だが鼻で酢酸臭を、目でフィルムのべとつき(糊稠)、白い粉(結晶)の析出、波打ち、ワカメ状の変形(収縮)、ごわごわした感じ(脆化)、画像の剥離、崩れなどのフィルムベースの異常を確認することである。酢酸臭は出始めると止めることはできないので、急いでそのフィルムを箱から取り出し、ネガカバーも一緒に隔離して他のフィルムに感染しないようにしなければならない。
軽く匂う程度の初期段階の応急的な措置としては、乾燥した日に、フィルムを収めた箱や容器の蓋を開けて通気をする。無酸性の紙製ネガファイルやストレージボックスに移し替え、低温低湿(14~18℃、35~45%以下)の環境で保存することが望ましい。
とのことだ(写真工業2008年6月号78~79ページ)。
まだ波打ったフィルムとかはないけれども、軽く酢酸臭のするフィルムは一部あるなぁ。ヤバいぞ、これは。正倉院展のあるこの時期、フィルムを出して空気に触れさせるのに最適な時期なのかもしれない。
しかし、湿度はなんとかできるとしても、年間を通じて14~18℃で保管というのは難しいなぁ。倉庫でそういうのがあったように思うけど、そういうところに預けてしまうともう預けっぱなしになるし。そうか、そのためのプリントとスキャンか。しかし、これ、親の時代の分も含めて全部スキャンするのか…。そこで、富士のスキャンサービスが生きてくるのか。
富士フイルムの写真・フィルムの定額デジタル化サービス「かんたんデジタルパック」 ― 2008年02月07日
うう、なんか金掛かりすぎ。やはりコダクロームだな(そうなのか?)。
【参考追記】
「マイクロフィルム保存のための基礎知識」(国立国会図書館 収集部資料保存課) (PDFファイル 587KB)
【参考追記ここまで】
【関連追記その2】
マイクロフィルムの長期保存 劣化とその対策(コダック株式会社ドキュメントイメージングアンドビジネスプロセスサービス事業部企画部 楢林 幸一) (PDFファイル 1.3MB:リンク先は国立国会図書館)
【関連追記その2ここまで】
【関連追記その3:2008年10月31日】
大切な資産を守る KEEPING THE LEGACY OF TRUST. アセテートベースのマイクロフィルムを長期保存するにはどうすればよいか(コダック)(PDFファイル 678KB)
【関連追記その3ここまで】
【関連追記その4:2010年8月13日】
ビネガーシンドロームはネオパンSSで顕著だそうだ ― 2010年08月13日
【関連追記その4ここまで】
【関連追記:2017年3月22日】
いまごろ富士フイルムの調湿シート「キープウェル」販売終了に気づく ― 2017年03月18日
Kodak モレキュラーシーブが届いた ― 2017年03月22日
写真は懐かしのネガ袋。フジブロマイド、サクラカラー、東洋現像所など。
コメント
_ イグレク ― 2008年10月30日 16時39分46秒
_ Haniwa ― 2008年10月30日 20時54分27秒
ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。
私のところでも一番酢酸臭のするのが父の撮った8mmフィルムですね。まだワカメにはなっていないので風通しのよいところに置くことにしました。
90年代以降のポリエステルベースのものは大丈夫なんでしょうかねぇ。なんか心配です。
_ MANA ― 2008年10月30日 21時23分31秒
考えてみれば、当たり前ですよね。
私が小さい頃の映像も父が8mmで撮っていたはずなので、もしかすると…違うメディアにうつしておかないと勿体ないですね。
でも、保存性の良いメディアってあるのでしょうか?DVDもなにげに不安ですし…消えるところも味と思うしかないのでしょうかね。
_ やまろ ― 2008年10月30日 21時54分45秒
一般人には環境試験室みたいな厳密な温湿度管理は出来ませんし。 進行すると止めることができないのが痛いです。
幸い自分のフィルムは90年代以降のものなのでまだ大丈夫ですが、親父が昔撮ったものは危ないですね。帰省したら知らせとかないと。
_ kazu ― 2008年10月30日 22時16分37秒
写真乾板ならばピネガーにはならないのにね
_ Haniwa ― 2008年10月31日 12時12分23秒
8mmは巻いてあるので、ビネガーシンドロームになりやすいのかもしれません。
なんかすごい長い8mmのものもあるので(リールがでかい)、DVDに変換するとしてもかなり面倒ですねぇ。
もう、ガラス乾板にコピーでしょ(笑)。
■ やまろ様
たしかに諸行無常なのでしょうが、なんとか残したいですねぇ。
>進行すると止めることができないのが痛いです。
そうなんですよねぇ。なんか薬剤で止めるとか誰か考えて欲しいですねぇ。
■ kazu様
そうです。これからは、銀塩写真やデジタル写真をガラス乾板に焼き付ける産業が興ってくるのです(笑)。でも本当に大事なものはなにかそうして欲しいですねぇ。
フィルム保管用に大きな冷蔵庫買うとか、一部屋をフィルム保管用にして年中空調入れるとかしないと駄目なんでしょうかねぇ。
_ MANA ― 2008年11月02日 21時32分14秒
うー、今度実家に行ったら、救済を考えます。
フジフィルムとかでDVDとかにしてくれるサービスがありますよね。ああいうのは、どうなんでしょうか?<っていうか、個人で8mmをDVDにする方法は持っていないし、分かりませんが。
お世話になっている写真館の方に古いガラス乾板を見せて頂いたことがありますが、あれは、保存が大変すぎます。場所を取るし大変でしょう。
永遠はないのですね。
_ Haniwa ― 2008年11月04日 09時18分03秒
わたしも高校の時に写真部にいた同級生にガラス乾板見せてもらったことがありますが、なんかガラスに煤で書いたみたいな感じでした(笑)。しかし、ベースが崩壊するというのなら、崩壊しにくいベースがいいですよねぇ。
たしかに永遠はないですねぇ。
酢酸臭の発したフィルムは、富士のKeepWellがよさそうです。酢酸ガスを吸収するようです。うちの8mmはキープウェルを入れてみることにします。
http://haniwa.asablo.jp/blog/2007/05/31/1545507
_ MANA ― 2008年11月04日 22時53分27秒
今更8mmを映写することはないでしょうから、とりあえずDVDにしてもらっちゃった方が良いかもしれませんね。
父にはそんな話をされていたのですが、8mmだから大丈夫と安心していたので、良かったです。ありがとうございました。
_ Haniwa ― 2008年11月05日 08時53分54秒
しかし、いったいお金がいくら掛かるのか心配です(笑)。
_ MANA ― 2008年11月05日 21時13分18秒
話をしてきて、今度、行く時までに出しておいてもらうことにしました。
ちょっとお金がかかっても良いから、DVD化してみようと思います
。8mmが見られなくなるよりも、とりあえず、DVD化で問題を少しだけ先送りできそうですから。
_ Haniwa ― 2008年11月07日 09時09分26秒
KeepWellはとりあえず買いました。
こうなると、DVD化→一定間隔でコピーし続ける、という方法しか永遠の保存はないようですね。フィルムに拘るのなら、PETベースのフィルムにデュープするとか。こっちの方がお金掛かりそうな気がします(笑)。
_ kojikoji ― 2009年01月29日 22時05分21秒
_ Haniwa ― 2009年01月29日 22時21分00秒
ワカメ状でもやってもらえるのですね。安心して依頼できますね。
しかし問題は8mmの中身が私が生まれる前のもので、なにが写っているのか恐くて見られないことです(笑)。父が知らない若い女の子とデートしていたりしていないか心配で(笑)。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。
ビネガーシンドローム、症状は知っていましたが、こういう名前だったとは知りませんでした。とても参考になりました。
実は父が撮影した、私が生まれた頃の8ミリフィルムがこの症状になっていまして、見ることができなくなりました。
そんなわけで、今、すこしづつ、昔の映像をDVDにコピーしはじめているところです。