ニッコール千夜一夜物語 第九十四夜 ニコンミニ AF600QD/Lite-Touch AFとES-22025年06月30日 00時00分00秒

【写真】東京大学千葉演習林(清澄作業所事務室)(2025年5月撮影、千葉県鴨川市清澄):Nikon Z6、AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G ED、F6.3 絞り優先AE、1/200秒、ISO-AUTO(ISO 100)、AWB(5160K)、マルチパターン測光、 オートエリアAF、手ぶれ補正ON(ノーマル)、高感度ノイズ低減:標準、自動ゆがみ補正、ピクチャーコントロール「オート」、手持ち撮影、マウントアダプターFTZ、バヨネットフード HB-72、ニコンNCフィルター、JPEGをリサイズのみ

ニッコール千夜一夜物語が更新されて、今回は第九十四夜 ニコンミニ AF600QD/Lite-Touch AFだ。執筆は大下孝一氏。

その中で気になったのは、ニコンミニに搭載のニコンレンズ28mm F3.5だ。3群3枚のビハインド絞りのトリプレットタイプのレンズだ。それも各レンズが「突き当て」になっている。

Nikon Lens 28mm F3.5 https://nij.nikon.com/enjoy/life/historynikkor/0094/index.htmlから

いわゆるビハインド絞りのトリプレットタイプのレンズである。以前お話したと思うが、トリプレットレンズは、色収差を含むすべての収差を補正できる最小のレンズ構成である。世界最小カメラといえども普通の価格帯で販売されるカメラなので、私の中では3枚のレンズで設計することは設計当初から決まっていた。このレンズの特徴は、各レンズの間隔が接近しており、レンズの縁で接触することで全てのレンズ間隔が決まる構成になっていることだ。このような構成を社内では「突き当て」といっているが、レンズの加工精度だけでレンズ間隔が決まるため、レンズを精度よく安定して生産することに寄与している。ちなみに第3レンズの両凸レンズは、前側面と後側面の曲率半径を全く同じにしており、組み立て時の表裏判別の手間を省いている。

レンズ同士の間隔を極端に短くすることはトリプレットレンズで28mmのスペックを実現するにはどうしても必要な事項だった。一般にレンズを広角化するには、レンズ間隔を広くとり、光線をゆるやかに曲げるというアプローチと、レンズ間隔を狭めることで、画面最周辺での高次の非点収差の発生を極力抑制するという2つの真逆のアプローチがあるが、前者のアプローチが使えるのは、レンズ枚数が豊富に使える場合に限られるため、トリプレット限定の設計では当然後者のアプローチを採用し、各レンズの間隔を可能な限り狭めているのである。さらに高次の非点収差を抑制するため、画面周辺に結像する光線がレンズの端部を通る第1レンズの屈折力を極力弱め、逆に絞りに近い第3凸レンズの屈折力を大きくしている。またレンズ間隔を狭めると、像面湾曲の指標となるペッツバール和が大きくなるため、第3凸レンズには高屈折率低分散ガラスを用い、像面の平坦性を確保している。

このレンズの描写について簡単に解説しよう。このレンズはトリプレット構成であるため、画面の最周辺まで均質で高解像な描写をするレンズではない。このカメラを使ってくださるユーザーを想定して、画面の主要部分が開放からコントラストのよい画像となるよう設計されている。L版プリントを主に見て楽しむユーザーにとって、解像力が高いことより、見た目の鮮やかさやコントラストの高さが重要と考えたためだ。とはいえ主要被写体が配置される画面中心あたりの解像力が低いと、L版や2L版プリントでも良し悪しがわかってしまうため、画面中心部の解像力とコントラストはできるだけ高くするようバランスした。像面湾曲および非点収差は残存しており、絞り開放では画面中間で一旦解像力が低下するが、画面6~7割でふたたび向上し、画面8割より外側で低下する。この解像力低下は絞り込むことである程度改善される。

軸上色収差、倍率色収差は、色のにごりにつながるため十分小さく補正しているが、開放付近の画面周辺では色のコマ収差が残存しており夜景などの実写で確認できる。これもコマ収差であるため、絞り込むことで目立たなくなるだろう。歪曲収差は、画面の主要部分では極めて小さく目立たないが、画面のごく四隅で-1%強の樽型歪曲がある。

そして、このレンズで一番特徴的なのは周辺光量だろう。このレンズのようにレンズの後ろに絞りを配置するビハインド絞りのレンズは原理的に周辺光量が少ないという宿命があって、このレンズも例外ではない。開放から可能な限りビネッティングを少なくするよう配慮したが、絞り込んで開口効率が100%となった場合でも大きな周辺減光が残るため、シーンによっては目立つことがあるだろう。

引用が長くなってすまんが、このような特徴をもつニコンレンズ28mm F3.5をニコンZマウントで発売して欲しい。「ニコンおもしろレンズ工房Z」でいいじゃない。いま、中国製の安い単焦点レンズが高性能から薄型までいろいろ出ているが、ニコンがZマウントでこういうレンズを安価に出してもいいんじゃないかな。検討してみて欲しい。

この記事でもう一つ気になったのが、ニコンES-2とNX-Studioで、ネガフィルムを撮影した後に反転させてフィルムをデジタル化する内容だ。

それではいくつかの作例をもとにレンズの描写をみてゆこう。今までの交換レンズの作例の多くはデジタルカメラで撮り下ろしていたが、今回は過去に撮影したネガフィルムをデジタイズしたものである。かつてはフィルムのデジタイズというとCOOLSCANのようなフィルムスキャナーで行うのが主流だったが、今はデジタルカメラとマイクロレンズによるフィルムの複写で高解像なデジタルデータに変換できるようになっている。以下の作例では、Nikon D3300にAF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8Gを装着し、ネガフィルムを約1:1.5xで撮影してデジタイズを行った。D850やD780を使えば、ネガフィルムの階調をカメラ内で反転してお手軽にデジタイズができるが、NX Studioを使うことで、他のニコンデジタルカメラでも行うことができる。やや手間はかかるが、より自由度の高いデジタイズが可能である。

これが正解というわけではないが、私の行った方法をざっと紹介しよう。まずフィルムの複写だが、演色性の良好なライトボックスにフィルムを置き、これにカメラ・レンズを正対させる。このためには、フィルムデジタイズアダプターES-2があると便利だが、三脚等にカメラを固定して行うこともできる。この場合第74夜で紹介したように、ミラーを使って被写体とセンサー面を平行に保つことが大切だ。またネガフィルムのデジタイズでは、実画面より一回り広く撮影するなどして未露光部分のベース色を記録しておくと、現像処理が容易になる。以下の作例では、絞りF8、ISO400、絞り優先オート(1/30s前後)で撮影し、RAWで記録保存した。

現像はNX-Studioで行う。まずホワイトバランスを「グレーポイントサンプルツール」でフィルムの未露光部分をクリックして背景をグレー化する。次にトーンカーブで階調を反転させる。具体的には、トーンカーブの左下をつまんで中間あたりまで直線を持ち上げる。次に右上をつまんで一気に下まで下げる。そして直線の左端をつまんで上まで持ち上げれば階調が反転された画像になる。ここまで出来たらトリミングツールを使って未露光部分の余白を切り取る。あとは思い通りの色調と階調になるように、RGB各色のトーンカーブを調整する。そして最後にレタッチブラシで、ゴミの乗ってしまった部分を修正すれば完成である。保存はファイルサイズが大きくなるが、16bit-tiff形式で保存しておくと、後々別ソフトで細かい調整ができるのでおすすめである。

以下の作例では、見た目に自然な色あいになるように調整したつもりだが、それでもデジタルカメラにはない、ネガカラー特有の淡い色合いや軟調なトーンが現れているように感じる。

ニコンES-1は持っているのだが、ニコンES-1はマウントしたフィルムに特化していたので(スリーブでもできなくはないのだが…)、スリーブとマウント両方のアダプターが最初から揃っているニコンES-2の方がよさそう。ただ、ニコンES-2はニコンダイレクトで税込19,800円 もするのだ。ネガ画像を反転するアプリとか接写用のレンズもなにもなくてこの値段なのだ。それで買うのを躊躇している。

ただ、中国ブランドのJJC 35mmフィルムデジタイズアダプターでも1万円ぐらいはするので、ニコンのがその倍ぐらいするのはおかしくないのかもしれない。

あと、ニコンES-2を購入するのに躊躇するのは、対応したMicro-Nikkorを持っていないからだ。マクロレンズは、VoigtlanderのMacro-Apolanthar 125mm F2.5 SLとAi Micro-Nikkor 55mm F2.8Sしか持っていないのだ。ES-2では、対応レンズが
Fマウントレンズ
・AF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8G
・AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
・AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8D
Zマウントレンズ
・NIKKOR Z MC 50mm f/2.8
しか挙がっておらず、Ai Micro-Nikkor 55mm F2.8Sはないのだ。

調べると、 Ai Micro-Nikkor 55mm F2.8SとES-2の組み合わせだと、レンズを最大に繰り出してもピントが合わないらしい。なにかのアダプターやリングで数mm前に出すとピントが合うという情報はあった。

あと、ES-2を買っていない理由としては、ネガを簡単に反転する方法が見つからないからだった。それが今回のニッコール千夜一夜物語で紹介されたのがありがたい。

ただ、作例5の犬の作例を見ると、ネガをスキャンするとありがちな色調だが、この色調は好きじゃない。なんか緑色が変。やっぱりここはフィルムスキャナーだよなと思ってしまう。しかし、この作例5以外のフィルムデジタイズは簡単にうまく行っていると思う。

劣化の少ないフィルムだと、このES-2を使ったデジタイズはよいかもしれない。傷やゴミや変色のあるフィルムは、COOLSCANとNikon Scanがやはり強い。

ES-2、値段が高いけどそのうち買いたい。というか、Nikon Creators 応援 サマーキャンペーン2025で5000円キャッシュバックのなかにこっそり混ぜておいてくれないかなぁ。


写真は記事とは関係ない。
【写真】東京大学千葉演習林(清澄作業所事務室)(2025年5月撮影、千葉県鴨川市清澄):Nikon Z6、AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G ED、F6.3 絞り優先AE、1/200秒、ISO-AUTO(ISO 100)、AWB(5160K)、マルチパターン測光、 オートエリアAF、手ぶれ補正ON(ノーマル)、高感度ノイズ低減:標準、自動ゆがみ補正、ピクチャーコントロール「オート」、手持ち撮影、マウントアダプターFTZ、バヨネットフード HB-72、ニコンNCフィルター、JPEGをリサイズのみ

バイクで上総松丘駅に行った後に上総亀山駅に寄って、どこかでお昼ごはんを食べようと思ったが、コンビニはないし亀山湖の亀山ダムでダムカレー食べようと思ったら定休日だし、それなら日蓮聖人が得度したという日蓮宗大本山千光山清澄寺まで行ったら食べるところがあるだろうと延々清澄まで行って(途中千葉県道81号市原天津小湊線はコンビニ無し)、最初に寄ったのが、この東京大学千葉演習林(清澄作業所)なのだ。
JR久留里線上総松丘駅 ― 2025年05月19日
国道410号四町作第一隧道(1902年開通) ― 2025年05月20日

この清澄作業所は、千葉演習林全域の森林管理業務を担っているそうだ。建物は1903(明治36)年建築で、千葉演習林に現存する最も古い建物なのだそうだ。

ツーリングの続きの記事を書こうと思ってずっとそのままになっていたので、続きの写真だけここに載せておく。この時点で午後1時ごろなのだが、まだお昼ご飯にありつけていない(泣)。

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