ガンガン乗るのはもう古い? ホンダ CRF250RALLY(開発者編・その2)(日経ビジネス) ― 2021年05月04日 00時00分00秒
なかなか更新できずすまんです。今回はバイクネタだ、すまん。
日経ビジネスに「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」という連載があり、ほとんどが自動車の話なのだが、最近筆者のフェルディナント・ヤマグチ氏がバイクに凝りだしたのでバイク記事が増えている。それで今回は祝!連載600回! ガンガン乗るのはもう古い?第600回 ホンダ CRF250RALLY(開発者編・その2)について取りあげたい。
F:フェルディナント・ヤマグチ氏
杉:本田技研工業 二輪事業本部 ものづくりセンター 商品開発部 商品開発課 ACE 杉山 栄治氏
杉:お客様に対してもそうなんですが、実は開発陣に向けても同じ話をことあるごとに何度も何度もしてきました。これはホンダのマルチパーパスモデルなんだよ、完全なオフ車じゃないよ、「オン・オフ」なんだよ、と。
F:どういうことでしょう?
杉:オフロードに特化しちゃイカンのですよ。これは一般の人が乗るオン・オフなんだから。でもオフ側に振ると開発のチーム員はみんな喜ぶんですよね。だってみんなオフをガンガン走る人たちですから。放っておくと、とことんオフロード側に行ってしまうんです。そうなると、メーターなんかもっとちっこくていいよね、足つきなんかチョンチョンと爪先だけつけばいいよね、シートも三角木馬にして前後左右にポジションを自在に移動できたほうがいよね……と、どんどんソッチ系に走ってしまうんです(苦笑)。
F:なるほど。分かりやすい(笑)。
杉:僕もオフ車に乗るからその気持ちはよく分かります。分かるんだけど、これは会社の仕事じゃないですか。自分の趣味のバイクを造っているんじゃないんです。メンバーの逸る気持ちに歯止めをかけつつ、一般のお客様はそうじゃないんだよ、ターゲットユーザーの要望を明確にして進めようよ、というのが開発において一番注意したところですね。
開発者がオフをガンガン走る人たちっていうのはいいね。でもそういう人たちに好きに作らせちゃ駄目なんだ。へー。
F:杉山さんよりももう少し世代が上で、オフをガンガン攻めるような方から、「いや杉山よ、お前なにヌルいこと言っているの? もっと凄いの造れよ。もっとバリバリのオフ車にしちゃえよ」というような声は出ませんでしたか?
杉:いや、それはないですね。そんな意見は出ませんでした。なぜかと言うと、ホンダにはソッチ系に特化したものを造ったが故に、市場をシュリンクさせてしまったという過去があるからです。諸先輩方もそれはよく覚えておられるので。
F:バイクを始めたばかりなので、そういう過去の知識が全くないんです。ホンダにはオフに振り過ぎて、お客にそっぽを向かれた過去があるんですか?
杉:実はそんな時期があったんです。僕が入社したころなんかはまさにそうでした。当時はウチだけでなく、極端なトレールバイクが大流行していました。それこそ各メーカーから凄いモデルが次々に出てきて。○色のバイクなんてバランスも取れていなくてひどかったし。
ホンダにはオフに振り過ぎて、お客にそっぽを向かれた時期があるんだ。知らなかった。自分は90年代前半にはもうバイクを降りてたからたぶんその時期よりも後なのかなぁ。ホンダのオンオフモデルでいえば、レーサーのXRとトレールのXLRが途中から境目がなくなってきた辺りかなぁ。でもそれって、いまでもユーザーには歓迎されてたんじゃないのかねぇ。違うのかな。歓迎している人はコアな人だけだったのか。オフにふりすぎてそっぽを向かれたというよりも、日本経済がどんどん悪くなっていって、若い世代がクルマやバイクを買えなくなったというのが市場のシュリンクの原因だと思うけどなぁ。自分がバイクを降りたのは、年齢的なものや、走れる林道がどんどんなくなっていったことなどが重なったからで、オフに振りすぎたバイクに飽きたわけではない。
話は変わるが、これの前の回のモデルチェンジで剛性低下、それってバイクじゃ当たり前?第599回 ホンダ CRF250 RALLY(開発者編・その1)には、CRF250Lの旧モデルオーナーには聞き捨てならない(笑)ような情報がある。
F:前モデルと比べて、オフロードの走破性が良くなったと感じたのですが、その要素はどこにあるのでしょう?
杉:やはり一番の要素は軽量化です。僕は入社してからずっとオン・オフをやらせてもらっているのですが、諸先輩方からは「軽量化こそ正義である」という思想を叩き込まれてきましたので。
F:軽量化こそ正義なり。
杉:はい。実は旧モデルも僕が担当していたのですが、「同じ人間が開発して、よくもここまで変えたよね」と言われてしまうほど変えたつもりです。と言うのも、前のモデルでは「遠くなった林道」をなんとかしたいという思いがあったからです。
F:遠くなった林道、ですか?
杉:はい。都心部に住んでいると、走れる林道がどんどん減ってきていますよね。関東だったら、長野や伊豆に行かないと思い切り走れなくなってきた。河川敷なんて勝手に走ると怒られちゃう。仕方がないから高速に乗って遠くに行くわけです。それまでのバイクは高速性能があまり良くなかったので、現地に着く頃にはもうヘトヘトに疲れてしまっていたんです。
F:それは旧モデルのCRFよりさらに前のバイク、ということですね?
杉:そうです。高速道路を走っているオン・オフ。例えばCRMなんかを見ても、こう車体をぶるんぶるん横に振らせながら走っているのをよく見かけました。当然くたびれてしまう。そこをなんとかしようと。「もっと林道を近くしよう、ラクに林道に行けるようにしよう」。そういう思いでやってきたモデルが旧CRF250なんですね。
杉:(略)
で、新型のCRF250LとRALLY。旧モデルではそうした背景からオンロード性能を上げていたのですが、お客様の声を分析すると、「高速はいいけれど、楽しみで来た林道に着いたときに思うように走れない」という声が多かったんです。これはもう少し中間を狙うべきだったのかなと。“中間”という言葉が適切かどうかは分かりませんが、何にしても目的地に着いてから楽しめないバイクじゃダメだよね、と。F:そりゃそうです。
杉:そこでもう少しオフロードに振ったバイクを目指したわけです。お客様が求められている方向がそちらであるならば、軽さと柔らかさの方向に振ろうと。
F:軽いと乗りやすいというのは分かるのですが、柔らかいと乗りやすくなるのですか? クルマなんてモデルチェンジの度にどんどん車体の剛性が上がっていくじゃないですか。剛性50%アップとか、元のクルマは何だったんだよ、というくらいに剛性数値のインフレが起きている(笑)。
杉:バイクの場合は、硬くシャキシャキし過ぎたフレームは明確に乗りにくくなりますね。スポーツ走行で目を三角にして、バシッと決めて走る分にはいいかもしれませんが、公道や高速、そして林道といろいろな道を走るオン・オフのバイクだと、ある程度の柔らかさがあって、いなしてくれないと楽しめません。
F:今回のモデルチェンジで、フレームの横剛性を25%もダウンさせたと伺いました。何と4分の1。これには非常に驚きました。モデルチェンジというと、何でもかんでも数値を向上させて、「前モデルと比較して○○%アップ!」と言って性能向上、機能向上を高らかに謳うのが業界のセオリーだと思っていたのですが、バイクの世界ではよくある話なのですか?
杉:そうですね。モトクロスさん(先に例として出た競技用バイクのこと。同じ会社の二輪製品でも、他の人が開発したものなので杉山さんは“モトクロスさん”とさん付けで呼んでいた)の450Rなんかも、今年のモデルは剛性を下げましたよね。過去においては、1990年ごろにやはりフレーム剛性が足りない時代があったんです。走ってふらふらする、ハンドルが振れるという市場の声が多くあって、ウチはそこでアルミニウムのツイン・チューブ・フレームというのを採用したんです。ぶっといメインパイプが2本あるようなフレームで、大きく剛性を上げたんです。
F:ヤワ過ぎるとの声が多かったので、イッキに上げた。そんな時代があったんですね。
杉:そうなんです。こう太いパイプがポーンと通っていて、イッキに剛性を上げたんです。でもそれは上げ過ぎで、ゴツゴツ乗りにくいバイクになってしまった。バイクには適正な剛性というのが必要で、そこからは徐々に下げてきている感じですね。歴史的に見ると。
F:面白い! ホンダ二輪フレーム黒歴史(笑)。
二輪広報・及川氏(以下、及):黒くないです、別に黒いことじゃありませんから! そういう言い方はやめてください。
やっぱりCRF250L/M/Rallyの前モデルMD38やMD44のフレームはカチカチの剛性なんだ。乗ってて太い丸太にまたがっているような感じがするなぁと思っていたのだ。以前の記事に書いたことがある(石廊崎へ行ってきた(その2) ― 2017年03月13日)。それでいてサスペンションは柔らかくないからガチガチの感じがした。なんかずるいなぁ。最初からMD47みたいなフレームで出してほしかったなぁ。
ということで、CRF250L(MD47)は買いですな。私ゃ買い換え(られ)ませんが(泣)。あと、金属製で10Lぐらい入るCRF250L用のガソリンタンクがサードパーティでいいから出ませんかねぇ。樹脂製のものは揮発するので、ずっと乗らない期間がある私には向いてないんですわ。
写真は記事とは関係ない。
米軍根岸住宅東側入口(横浜市中区、根岸森林公園脇)Huawei P20 lite(ANE-LX2J)、3.81mm(35mm版26mm相当)、F2.2開放、1/1203.4秒、ISO50、プログラムAE、AWB
バイクにまたがったままスマホで撮ったものだが、以前だとここには自動小銃を持って迷彩服を着た人が一人立っていたので、ここまでバイクで乗り入れる勇気はなかった。いまはほぼ撤収済みで、こことは別の1箇所のゲートのみ通行できるようになっている(銃を持った人はおらず受付の人のみ)。なお、外側の市道からここの門までの道路も米軍の管轄下で、周囲の住人や逐次返還された公園利用者のために通行が黙認されている状態だった。そのため放置自動車などがあった。日本側も米軍側もきちんと管理しなかったためと思われる。九龍城みたいだな。占拠しておけばよかったか(笑)。でも占拠でもしようものなら、米軍は本気出したろうな(怖)。
ここは返還後は横浜市立大学医学部と附属病院が移転する計画があるようだ。丘の上だから交通の便とかどうなんだろうね。
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