映画『MINAMATA』鑑賞&写真集『MINAMATA』購入2021年10月09日 00時00分00秒

左:写真集『MINAMATA』(新版)、右:映画『MINAMATA』劇場プログラム(パンフレット)

上野動物園のパンダの赤ちゃんの名前が「リンリン」「ランラン」になったそうで(違)おめでとうございます。

今話題の、ジョニー・デップ主演の映画『MINAMATA』を鑑賞してきた。映画は史実に基づいているとはいえ、若干事実関係が違ったり、複数の人物を一人に演じさせたりしているが、エンターテインメントである以上この辺りは許容範囲だと思う。

映画を見ていて、出てくる家屋がちょと垢抜けた西洋風だったりするのは何でだろうと思っていたら、水俣病を象徴する「あの写真」を撮った写真家の物語『MINAMATA─ミナマタ─』(ニューズウィーク日本版)20100930によると、「水俣での撮影はごく一部で、主なロケ地はセルビアとモンテネグロ。日本の海岸の風景とはどこか異なると感じるものの、大きな違和感はない」とのことだ。

どうりでエンドロールで出てくる名前のSの上にチェックが付いた文字が多いなと思った。ガイ式ラテン・アルファベットのŠ(エシュ)というШに相当する文字表示だ。ほかにもCの上にチェックの付いたČ(チェ)というЧに相当する文字も目立った。なるほど、セルビアやモンテネグロのスタッフの名前なんだな。

【追記】映画の冒頭で、アイリーンが富士フイルムのCM撮影の通訳としてユージン・スミスのアトリエ兼自宅を訪れたシーンは面白かった。富士フイルムのCMでユージン・スミスに”今まで使ったどのフィルムよりも色鮮やか”という内容を言わせようとして、ユージンが”俺がそれを言うのか?おれはカラーで撮ったことなんかないんだぜ。みんなもそれを知っているはずだ”といったことを言うのだが、”それも契約内容に入っているので言ってもらいます”とアイリーンに通訳されるシーンだ。私が映画館で見たときはこのシーンで誰も笑っていなかったが、写真趣味の人が多ければ笑い声が上がったはずだ。(台詞はうろ覚えなので悪しからず)【追記ここまで】

圧巻は、例の入浴のシーン『入浴する智子と母』だろう。これはすごい。是非映画でそのシーンを見て欲しい。

写真集の『MINAMATA』も買った。これは英語版が1975年、日本語版が1980年に発行されて、その後いずれも絶版となっていた。『入浴する智子と母』は、「1998年以来、遺族の意向で公開が控えられてきた」らしい(公害の悲惨さと人間の美しさと 写真家ユージン・スミスの妻、アイリーンさんが水俣で共に感じた鼓動(BuzzFeed News 2021年8月17日))。

智子さんの写真を大切にしたい 再版の写真集で復活

――その智子さんの写真が、智子さん亡き後、ご両親の願いで1998年に公開を封印されたのは残念なことです。著作権を持つアイリーンさんも苦渋の決断だったと思いますが。この写真の決定権を両親に渡したのですよね?

渡してはいないのです。公開を止めることができるという著作権の権利を使っているという認識です。

封印というよりも、あの写真を大切にしていくことが大事だと思っています。

1998年の結論は、「もう休ませてあげる」という結論でした。そこまでの数年間は、いつもあの写真だけ使用を依頼されて、「あれを出したら自分たちは仕事を終えた。自分たちは公害の戦いをちゃんとやりました」とこの写真が扱われているように感じることがあり、気になっていました。

智子ちゃんに仕事をさせ、利用している感じです。自分が行動する代わりに、あの写真が利用されている。

――それはアイリーンさんにとっては不本意だった。

そうですね。だからあの写真を大切にしたいという思いでした。だけどあの写真を閉じ込めてしまうつもりはなかった。これまでの20年間も「あの写真を大切にする」という気持ちは生き続けていました。

――被写体の思いを汲み取ることはとても大事だと思いますが、あの写真で伝わるものが大きいのも事実です。今回の映画でもオリジナルプリントが使われていますが、今後、公開するようなことはあり得ますか?

葛藤するテーマですよね。ユージンも「被写体に対する責任」と「見る側に対する責任」「伝えていく責任」について語っていました。私は場面、場面で誠実に考えていくのが一番大切だと思っています。

完成した映画を見て、この写真を大切にするなら今何をするべきかと考えた時、「本物の写真を見せることだ」という結論が出ました。

だから再版する写真集では、親御さんにもお願いして1975年に出したものと同じ内容を出します。智子さんの写真も全て入ります。

今回の写真集『MINAMATA』は、印刷もかなり凝っているようだ。札幌発 伝説の写真集再生 ユージン・スミス 「MINAMATA」新版 元妻自ら確認「感じたもの」再現に力(北海道新聞電子版2021年10月7日)によると、以下のようだ。

■質感、地道に修正

道のりは難航した。旧版で使用したオリジナルプリントはカビや変色があり、一部は現存していなかった。アイワードはオリジナルの他に旧版でボツにしたセカンドプリントや過去にオリジナルをスキャンしたデータも使ったが、セカンドはオリジナルより見劣りし、スキャンデータはさらに質が落ちるものもある。状態が異なる素材を一つ一つ画像編集ソフトで修正する地道な作業が続いた。

「自分が感じたもの」の再現を目指したユージンは現像にも力を入れた。中心に光を集めて周辺を暗く焼き込むなど明暗の対比を強めて劇的に演出する写真が多い。同社は最大5台のカメラを搭載し、複数のカメラで撮影した画像を合成する独自の「デジタイズ・システム」で、旧版では出せなかったオリジナルの階調や質感を再現した。

用紙も難問だった。旧版は漂白技術が途上で黄色がかっており、白い用紙に印刷すると写真の印象が大きく異なる。同社は黄色のインクを独自に調整。極小の点を用紙に印刷した上から写真を印刷した。完成まで約4カ月と通常の倍以上を費やしたが、浦有輝執行役員は「水俣病のように忘れてはいけないことを後世に伝えるには、デジタル配信ではなく書籍という形で残す責任がわれわれにもある」と強調した。

モノクロ写真のコントラストも写真集の方ではカッチリくっきりでべったりとインクが載った感じ。上記で引用した記事にも同じ写真が載っているが、モニターで見たものと写真集の写真とは全然印象が違う。これは写真集のこのプリントを是非に見て欲しい。

ということで、映画『MINAMATA』と写真集『MINAMATA』(新版)はお勧めだ。


左:写真集『MINAMATA』(新版)、右:映画『MINAMATA』劇場プログラム(パンフレット)


【追記】

THE BIG ISSUE JAPAN415号 2021-09-15 発売

映画『MINAMATA』でアイリーン・スミス役を演じた美波さんが、THE BIG ISSUE JAPAN 415号(2021-09-15 発売)のスペシャルインタビューに掲載されている。
【追記ここまで】


戴いたコメントのお返事はお待ちください。m(_ _)m

コメント

_ みっち ― 2021年10月09日 23時22分47秒

おーっ、もうご覧になりましたか、それに新装版の写真集も。(驚)
何はともあれ、詳細な紹介記事ありがとうございます。

ジョニー・デップは最近ろくな噂を聞かず、ハリウッドでも干されているとかいう話でしたが、ちゃんと仕事してたんですね。
写真集「Minamata」は発表時評判高かったですが、とっくに絶版で入手不能、こういう古い写真集の再販って、滅多に行われません。よくやったなぁと思います。映画の勢いがなかったら、到底できなかったでしょう。
それにしてもジョニーが主演しなかったら、ここまで評判にならないはず、ハリウッド・スターの影響力って、実に大きなものなんだなぁと実感します。

_ ノラ猫軍将軍山本ミケ六 ― 2021年10月10日 14時23分23秒

>水俣病を象徴する「あの写真」

石原〇太郎が土下座している写真……、
まぁ謝るだけマシだったんだと今の政治屋を見てると……。

>「リンリン」「ランラン」になったそうで(違)おめでとうございます。

Haniwa家の天井裏で産まれた黒白柄の猫には「インイン」「メツメツ」という名前を
付けました、
QRコードと認識されるのでスマホなどで撮影すると危険なことになりますのでやめてください。

_ Haniwa@m(_ _)m ― 2021年11月18日 00時52分26秒

皆様、お返事が滞ってすみません。m(_ _)m

■ みっち 様

>写真集「Minamata」は発表時評判高かったですが、とっくに絶版で入手不能、こういう古い写真集の再販って、滅多に行われません。よくやったなぁと思います。映画の勢いがなかったら、到底できなかったでしょう。

そうなんです。「封印」されていた写真も今回掲載されたというので、ちょっと高かったのですが買いました。

>それにしてもジョニーが主演しなかったら、ここまで評判にならないはず、ハリウッド・スターの影響力って、実に大きなものなんだなぁと実感します。

そう思います。

チッソの社長に扮したつもりでスヴェンソン整えて行きましたが(違)、ただのやつれたサラリーマンにしかなっていませんでした(泣)。格の違いを…(泣)。

_ Haniwa@m(_ _)m ― 2021年11月18日 00時59分52秒

皆様、お返事が滞ってすみません。m(_ _)m

■ ノラ猫軍将軍山本ミケ六閣下

>>水俣病を象徴する「あの写真」

>石原〇太郎が土下座している写真……、
>まぁ謝るだけマシだったんだと今の政治屋を見てると……。

そうですね。石○慎太郎はまだましだったんですかねぇ。
謝りも説明もせずに幹事長辞めただけで済ました人もいますし。

石○慎太郎氏といえば息子さんが今回落選したということで話題になっていました。
山本太郎が出る出ないといった選挙区でしたが、それが功を奏したんでしょうかねぇ。

>「リンリン」「ランラン」になったそうで(違)おめでとうございます。

>Haniwa家の天井裏で産まれた黒白柄の猫には「インイン」「メツメツ」という名前を
付けました、
>QRコードと認識されるのでスマホなどで撮影すると危険なことになりますのでやめてください。

や、やめてください。天井裏は定期的に点検しなければ…。

そういえば歌手リンリン・ランランの近況動画を見てしまいました。当時と印象が同じでビックリしました。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
私がよく言う「ニコンはレンズの○○環を無くすな」の○○とは?ツイッター@Haniwa_Japan参照

コメント:

トラックバック

Google
WWW を検索 haniwa.asablo.jp を検索
asahi-net.or.jp/~sp5j-hys/ を検索
※ブラウザで「保護されていない接続」「安全ではありません」などの表示が出る場合はSSL対応のhttps://haniwa.asablo.jp/blog/の方にアクセスしてください。お気に入り・ブックマークもSSL対応の方に変更をお願いします。(2021/02/23)