ザ・ワークス Vol.53 AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G(nikon-image.com) ― 2013年10月21日 00時00分00秒
AF-S NIKKOR 58mm f/1.4GがどうしてNict-Nikkorを名乗らなかったのかなど疑問に思っていたのだが、ニコンの「ザ・ワークス」に設計者の佐藤治夫氏(すみません、しばらく呼び捨てになっていましたm(_ _)m)の説明が載っていた。
ザ・ワークス Vol.53 AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G(nikon-image.com)
ノクト・ニッコールを超える、絞り開放で周辺部まで「点が点に写る」レンズ
AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G の設計思想をお聞かせください。
佐藤 AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G の設計にあたっては、大きく二つの思いを込めています。その一つは、かつて「点が点に写るレンズ」として高い評価をいただいた、ノクト・ニッコールの設計思想を発展させ、ノクト・ニッコール以上に高い解像力を持ちながら、点光源を「ゆがみ」や「にじみ」のない点として描写するということです。 具体的には、遠景に対して鮮鋭感やコントラスト、解像力を大幅に上げてあります。ノクト・ニッコールをはるかにしのぐ、開放F 値が1.4 のレンズとは思えないほどの高い鮮鋭感を持っています。そして、単に鮮鋭感が高いというだけではなく、広い範囲でサジタルコマフレアーを効果的に抑えているので、点光源が点に写る度合いもノクト・ニッコールよりさらに進化しており、画面周辺まで「点光源が点に写り」ます。それだけでなく、画面の端に写っているものも、引きつれたり変形したりしません。木の枝が本物の木の枝に見え、車のボンネットやバックミラーも本物の車の一部に見えて、ミニカーが置いてあるような画にはならない。そういう気持ち良い描写をします。しかも、絞りをf/2.8 やf/4、f/5.6に絞った時だけでなく、f/1.4 の開放からそういう画が撮れる。これはぜひ体感していただきたいと思います。
やっぱりノクトニッコールの後継の意味合いがあるんだ。
NIKKOR レンズの「味」を広げる新しい提案
お客様へのメッセージをお願いします。
AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G は、ノクト・ニッコールの設計思想を受け継いではいますが「現代版ノクト・ニッコール」を目指したレンズではありません。むしろこのレンズは、私自身が長年レンズ設計に携わってきて、色んなレンズを設計しながら「こういうレンズがあったらいい」と常々思い、長い間ずっと温めてきた、「こういう風に写ると写真を撮っていて一番気持ちがいい」と思えるレンズです。NIKKOR は今年80 周年を迎えました。その長い歴史の中で、開発に携わった幾多の先人たちの思いや伝統が、NIKKOR にはしっかり残っています。その中で、決してオールマイティーではありませんが非常に個性的で新しいレンズになっていると思います。お客様に、「こういうレンズがあってもいいんじゃない」、「NIKKOR にはあるべきだよね」と言っていただけると、設計者としては非常に嬉しいです。
佐藤治夫氏にとってのひとつの理想のレンズだから、Noct-Nikkorにはしなかったんだな。でもそれは世間的にはNoct-Nikkorのような気がする。
ほかにも、どうしてF1.2じゃなくてF1.4なのかも書かれている。
絞り開放、無限遠でも豊富な周辺光量をキープ
開放F 値を1.4 としたのはなぜでしょうか。
周辺光量を十分に残すためです。58mm f/1.2 のノクト・ニッコールへのオマージュの意味合いも込めて焦点距離は58mm としながら、開放F 値を1.4 とした秘密も、実はここにあります。
大口径レンズは周辺光量が急激に低下しやすいという特性があります。その特性は、開放F 値が小さくなればなるほど顕著に現れます。また、周辺光量は無限遠が一番少なく、近距離になると増えていきます。
せっかく開放絞りで周辺まで「点が点に写る」のに、周辺光量が少ないのではその持ち味が活かせません。そこでAF-S NIKKOR 58mm f/1.4G は、この点を考慮して開放絞りからの使いやすさを優先し、周辺光量を確保するため開放F 値を1.4 としました。この結果、開放絞り、無限遠でも、他社製の開放F 値1.4 大口径レンズを凌ぐ、豊富な周辺光量を確保できています。
この豊富な周辺光量と、開放絞りから「点が点に写る」描写特性を活かして、このレンズでしか描写できない風景写真を撮ることができるはずです。
いいレンズなんだろうけど、色々な意味でちょっと買えないですなぁ。使ってみたいとは思う。でも、その前に最近あんまり使っていないAi AF Nikkor 50mm F1.4DとAi Nikkor 50mm F1.2とNIKKOR-S・C Auto 50mm F1.4 (Ai改)をもっと使い込めということですな…。
【追記】作例を付けるのを忘れていた。写真は記事とは関係ない。
横浜市電保存館:Nikon D300、AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR、42mm、F5.3開放、1/30秒、ISO360、-0.3EV、VR:ON、AWB、ピクチャーコントロール:ポートレート、Nikon NCフィルター、HK-2
7月にリニューアルした横浜市電保存館に、リニューアル後初めて行った。リニューアルというのだが、市電の車両を展示してあるところは明るくはなったが、それ以外の展示物が減っていた。展示スペースも若干減っていた。エントランスにあった市電が走っていた当時の映像ライブラリーがなくなってしまったし、市電の動力車運転免許証などの展示もなくなったし、横浜市電が年次を追ってどう拡大し縮小して廃止になったのかという図もなくなった。受付のところには、横浜市交通局関連のグッズ以外にNゲージの鉄道模型も若干売っていたのだが、そういう販売物も減った。一緒に行ったHaniwa家族は「『リニューアル』じゃなくて『リニュー悪』だ」と言っていた(笑)。こんなにがっかり感の強いリニューアルも珍しいと思う。
コメント
_ small-talk ― 2013年10月21日 15時34分48秒
_ Haniwa ― 2013年10月22日 08時51分29秒
Noct-Nikkorはたしか定価15万円ぐらいでしたっけ。その後の中古価格を思えば、末期に新品で買った人はうらやましいなぁという感じです。
>こういうレンズって決して売れ筋ではないし、変な言い方ですが、大方のユーザーは「不急不要」のレンズですから、メーカーもある程度、開発リソースに余裕がないと、出せないと思います。
>そういう意味で、DXレンズを開発し、その後、FXレンズのラインナップを構築した、波瀾万丈のデジタル化対策も、一段落したのでしょう。
御意に。これからは遊び心のあるレンズ、夢のあるレンズを増やしていって欲しいですねぇ。ボディにも夢がないですからそちらもお願いしたいですね(なにかレトロデザインの一眼レフの噂がありますが)。
>F2クラスの超広角単焦点とか、開発しそうですね。
電球みたいなレンズでしょうか(笑)。
AFニッコールにはF2クラスのレンズがずっと欠けていましたよねぇ。24mm F2とかAF化されませんでした。コンパクトでリーズナブルな明るい単焦点レンズが欲しいですね。どうせ絞り環ないんでしょうが(泣)。
_ Roberto ― 2013年10月22日 11時03分32秒
ノクトはボケ味など決して良いとは言えませんでしたから、こちらはより汎用性のある理想レンズを目指したのでしょう。ライバルはシグマの50/1.4でしょうか。あちらのほうが大きくて重いですね。
僕自身は、35mm/f2をリニューアルして欲しいです。Dタイプを愛用してますが、フルサイズDSLRではさすがに開放付近が甘すぎる場合があります。
_ Haniwa ― 2013年10月23日 08時18分01秒
営業トークではない熱いコメントですよね。
シグマに刺激されての発売かもしれませんね。
Ai AF Nikkor 35mm F2Dでしょうか。
昔のアサカメ診断室でも、MFの35mm F2よりも構成枚数が減った分どうのみたいな記述があったような。いまの高画素時代ならなおさら色々不満は出てくるかもしれませんね。
わたしも35mm F2を買う際にAi Nikkor 35mm F2Sにするか迷ったものです。
MFの方も時代によって微妙に描写が違うようです(赤城氏の記事だったと思います)。
そういえば、肉厚レンズの35mm F2.8が欲しかったのを思い出しました(笑)。
ttp://www.nikon-image.com/enjoy/interview/historynikkor/2008/0812/
ttp://haniwa.asablo.jp/blog/2008/12/25/4026343
_ USHIO ― 2013年10月25日 12時44分34秒
正直申しまして、Haniwa様のこの記事を見て、初めてこのレンズの存在を知った次第です。
ニコンさんもこういうレンズが出せるんだったら、いっそのこと絞り環とカニの爪つけるとこまで徹底して欲しかったですよね。そうすれば、フィルム時代のニコンでノクトと撮り比べ…なんてことも出来たんでしょうに(勿論僕には出来ませんが笑)
ところで私こと、ふとしたきっかけからこの半年あまり、ほぼ週一本のペースでフィルムを消費するようになりました。手持ちカメラとレンズやフィルムを色々と組み合わせる中、以前Haniwa様が「絞り開放へろへろ」と評していた5.8cm F1.4(かなり初期のもの)の描写も楽しみました。
…楽しんだのですが、やはり「特殊レンズ」なのだと感じました。「絞り開放へろへろ」を引き出せる局面以外では、58mmという焦点距離ゆえの画角にどうしても馴染むことが出来ませんでした。
以下、拙ブログです。
ttp://umblog.air-nifty.com/umblog/2013/05/post-610b.html
ttp://umblog.air-nifty.com/umblog/2013/05/post-f100.html
_ Roberto ― 2013年10月26日 20時36分55秒
なかなか良さそうですよ
、、、
_ Haniwa ― 2013年10月29日 23時09分04秒
■ USHIO様
こちらこそご無沙汰しております。
>ニコンさんもこういうレンズが出せるんだったら、いっそのこと絞り環とカニの爪つけるとこまで徹底して欲しかったですよね。そうすれば、フィルム時代のニコンでノクトと撮り比べ…なんてことも出来たんでしょうに(勿論僕には出来ませんが笑)
頑張れば買えなくもない値段ですから、絞り環あればよかったのになぁと思いますね。赤城耕一氏も絞り環あればとツイートされていました。
>以前Haniwa様が「絞り開放へろへろ」と評していた5.8cm F1.4(かなり初期のもの)の描写も楽しみました。
よいですね。うらやましいです。以前我楽多屋さんで安くみかけて買おうか迷ったのですが、そのときは知識がなかったので「Ai改を見つけたら買おう」と見送ったのです。しかし、後で調べましたら5.8cm F1.4にはAi改造サービスがなかったので、5.8cm F1.4の純正Ai改造レンズは存在しないんです。買ってから悩むべきでした。
絞るとかっちり写っていますね。さすがニッコールという感じですね。
開放もピントの来ているところは芯がありますね。見つけたら買いたいと思います。
>58mmという焦点距離ゆえの画角にどうしても馴染むことが出来ませんでした。
やはり難しいですか。私もこのあたりの画角はあまり使いこなせていないんです。その割に何本も持っているんですが(汗。
■ Roberto様
AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G本当によいですね。
しかし、しかしですよ、動画に使うことをアピールするのであれば絞り環つけるべきですよねぇ(またそれかよw)。
点光源がきれいで映画向きですよねぇ。買えたら買いたいですが、優先順位は低いです(泣)。
_ ノーネームしたん ― 2013年11月03日 14時59分16秒
だったら呼び捨てはかわいそうですねぇ、
まあ当時積極的になくす方に裏工作してたのなら、名前で無く”番号”で呼称したほうが・・・と。
AF-S NIKKOR 58mm f/1.4GがAi付のDなら買うのですが・・、ほんとにGレンズをAi付に改造出来ればなぁ・・と。
_ Haniwa ― 2013年11月05日 18時10分51秒
お返事が遅れてすみません。m(_ _)m
>佐藤治夫氏は朝亀で昔「絞りリングなくすと僕が困ります」的な事言ってたような
発言していました。保存しています。まあ時代が変わったんでしょうね。絞り環付けようとか言ったら、某赤字の恥知らずの会社みたいに廊下に机を出されて自習させられるとか産業医に変な病名付けられてしまうとかそこまではないと思いたいです。
>だったら呼び捨てはかわいそうですねぇ、
すみません、他意はないです(泣)。コピペしてそのまま気づかないでいたんですぅ。
>AF-S NIKKOR 58mm f/1.4GがAi付のDなら買うのですが・・、ほんとにGレンズをAi付に改造出来ればなぁ・・と。
せっかくのNikon Dfのキットレンズも絞り環ないんですよねぇ。
ゴト氏が企画に関わっているそうで、どうして絞り環付けなかったのか1週間ほど合宿して問い続けたいですね(笑)。
ニコンDfの発表会で後藤哲朗氏が企画説明
ttp://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/20131105_622200.html
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ノクトニッコールは、僕が写真に興味を持った頃(1980年代前半)、レンズのカタログに載っていました。
AI化が完了し、オートフォーカスが出始める前の、今思えばMFレンズの黄金期でした。
こういうレンズって決して売れ筋ではないし、変な言い方ですが、大方のユーザーは「不急不要」のレンズですから、メーカーもある程度、開発リソースに余裕がないと、出せないと思います。
そういう意味で、DXレンズを開発し、その後、FXレンズのラインナップを構築した、波瀾万丈のデジタル化対策も、一段落したのでしょう。
次はどんなレンズが出るのでしょうね?
F2クラスの超広角単焦点とか、開発しそうですね。