デジタル時代にあえて中判フィルムカメラ(日経BP)2009年03月13日 00時00分00秒

FUJIFILM GF670 Professional

デジタル時代にあえて中判フィルムカメラ(1)という富士フイルムへのインタビュー記事が日経BPに載っている。

昨今これだけデジタルカメラが全盛になっているのに、どうして時代に逆行するかのようなフィルムカメラを開発・販売することになったのでしょうか。

石原 一言でいうと「使命感」ですね。フィルム写真という文化を次世代に伝えていくのは、我が社の重要な責務だと考えているからです。

確かに、「記録」という点ではデジタルカメラのほうがはるかに便利です。我々とてそれを否定するものではありません。しかし便利さだけを追求して、それで写真の楽しみが深まるかというと必ずしもそんなことはないと思う。フィルムならではの描写やアナログ的な操作などを楽しむことも、写真という文化を構成する大切な要素であるはずです。

むろん我が社でもコンシューマー向けカメラはデジタルが圧倒的ですし、総売り上げに見るフィルムの割合も3%程度でしかない。だからといってこれは、デジタルがフィルムに卓越するとかいった筋のものではないのですね。デジタルとフィルムとは決して対立概念ではなく、むしろ車の両輪として写真文化の発展に寄与していくべきものです。

引用者註:「石原」はプロフェッショナル写真グループ担当部長の石原慎治さん、聞き手は諏訪弘さん

なんという頼もしいお言葉。頑張ってフィルムも使うのでフィルムの生産続けてくだされ。そして、軟調忠実系のネガフィルムももっとお願いします。派手派手浮きまくりの画像はデジタルに任せればいいのだ。

また、35mmフィルムカメラではなく、中判の「GF670 Professional」にした理由もきちんと書かれている。デジタルと比べてフィルムのよさを訴えるには中判の方がいいという点と操作感を楽しむには大きなカメラの方が楽しい、と。

そして蛇腹や巻き上げノブ採用も「機能的な必然があってのこと」だという。蛇腹はコンパクトになるし内面反射を抑える効果が高い、と。巻き上げノブは、6×6判と6×7判との切り替えの関係上巻き上げレバーだとレバーの回転角が判型によって変わってしまうのを避けるためだ、と。

ああ、GF670 Professional買いたいなぁ。しかし、高くて私には買えない。

そして、デジタル時代にあえて中判フィルムカメラ(2)では、なぜ機械式シャッターにしなかったのかをこう答えている。

そこまでフィルムカメラ好きの心をくすぐる仕様にしていながら、シャッターは電子制御ですね。オート露出(カメラまかせで適正露出が得られる機能)を実現をするためには仕方がないこととはいえ、画竜点睛を欠く印象は否めません。せめて電子シャッターと機械式シャッターのハイブリッドにすることはできなかったのでしょうか。

石原 それ、絶対に突っ込まれると思ってました(笑)。確かに、機械式シャッターにすれば、たとえ電池が切れても撮影はできるし、電池消耗が激しくなる寒冷地での撮影でも都合がいい。「GF670 Professional」は風景撮影用のフィールドカメラとして使われることも多いだろうことを考えると、機械式シャッターのメリットのほうが大きいのは否めませんね。

でもね、これはもう仕方がないんですよ。もはや機械式のシャッターは存在しないんですから。

もう少し詳しくお話ししましょうか。「GF670 Professional」では「レンズシャッター」というシャッターを採用している。その名の通り、レンズ内の遮光幕が開閉して露光するタイプのシャッターで、中判以上のフィルムカメラではよく用いられているものです。我が社ではシャッターの生産はしていないので外部調達することになるのですが、しかし「GF670 Professional」の撮影レンズに搭載できるタイプのレンズシャッターで機械式のものはもう入手できないんですよ。

もちろん世界中を探せばないこともないのでしょうが、そうなると今度は安定供給や品質面での問題が出てくる。かといってゼロから自社開発すると、とんでもないコストがかかる……。というわけで涙を飲んで電子シャッターを採用したわけです。昨今のレンズシャッターの耐久性は随分と向上していることもありましたけれど、もし機械式のシャッターが安定調達できるのならば当然そちらを選択したでしょうね。

なにー、レンズシャッターの機械式のものはもう存在しないのか…。コパルに頑張ってもらって作るとかもう出来ないのかなぁ。そうしたら「GF670 Professionalの希望小売価格50万円ですがいいですか?」とかなってしまうのか。まあどちらにしても私には買えないのだから私にとってはどちらも同じとも言えるが(笑)。それにしてもショックだなぁ。セイコーは機械式時計を復活させて継続してるじゃないか。機械式のレンズシャッターも作り続けないと作れなくなってしまうぞ。

コメント

_ Wakashi ― 2009年03月13日 12時25分05秒

Haniwa様、おかえりなさい。
GF670、販売店に聞くとそれなりの数の予約は入っているとのことです。機械式シャッターについてですが、35ミリのベッサに使える機械式シャッターの供給はあっても、レンズシャッターの機械式がないらしいのですね、知りませんでした。コパル何番、とかああいうのは現存する?でも、あの鏡胴には組込めないということ?

昨日はネット上で中古カメラ店を回遊し、横浜のコシナ製品に強い(皆様もたぶんご存知の)カメラ店のトップページに、こんな「ほのめかし」を見つけました。

>今年は(株)コシナ社の創立50周年の年、何か新製品が発表されるのでは?期待しましょう!
>2009年は、コシナ社創立50周年の年、私たちは新製品の発表を期待しております。
>そして今年は、コシナ・フォクトレンダーBessa発売10周年の年でもあります。
そこで。
ベッサⅢ、アポランター付き。コパル機械式シャッター。6×9と6×4.5に対応。トップカバーはブラックペイントとシルバー。それぞれ1000台ずつ限定。フォクトレンダー創業の1756年から253年目であることと、コシナ50周年を記念したレタリングを書き込んだトッププレート。
こんなのどうでしょう?コシナフォクトレンダーのオタク以外にはヒットしないような予感。
他の50周年製品のアイデアはありませんか、皆様。

_ Haniwa ― 2009年03月13日 13時01分25秒

Wakashi様
ただいま。\(^o^)/

レンズシャッターの機械式全部がないのではなく、たぶんこのGF670のレンズ口径にあったレンズシャッター(00番?)の機械式はもうないということなのでしょうね。

コシナは創立50周年なのですか。中判と35mm判の両方で何か記念モデルが欲しいですね。35mm判は28mm枠対応のBessa 5A/5Mとか(笑)。中判はGF670がBessa III になるらしいのでBessa IVということでお願いします。35mm判の方はなんとかなるかもしれませんが、中判の方は買えないですねぇ。

あとは記念レンズとか。SLシリーズで55mm F1.2とか85mm F1.2とか。もちろん鏡筒に"Cosina 50 Jahre"と刻印入り(笑)。CPUは要らないのでカニの爪は付けてください。(笑)。

_ B7 ― 2009年03月13日 20時12分04秒

漫画のような「失われた技術」になっていってしまわないようにと
願うばかりですね。すべてがそのままに移り変わっていくことは
許されないのが進歩、進化だとは思いたくないです~。

フィルム、僕はコダック&センチュリア派なのですけど
これからはフジも使います(笑

_ WANI ― 2009年03月13日 21時24分04秒

ん~、中判・・・使ってみたい気はありますが新しい引き伸ばし機とレンズが欲しくなる事必至な上にフィルムスキャナーも欲しくなるはず・・・と思うと恐ろしくて手を出せません(w。

しかし、フジフイルムのこの心意気が続く限りNATURA1600は安泰に思えて安心です(w。江ノ電の夜間撮影にはこのフィルムが欠かせません。

_ ZARDファン ― 2009年03月15日 23時49分39秒

こんばんは
このカメラ作ったの使命感だって?
だったら限定品にするなよ!!!って言いたい
価格も庶民離れ!!!

・・・・・・・だが・・・・・・・である・・・・・・・
遊び心を持ったコンセプトのカメラ作るメーカー少ないし

次作に期待しよう

_ Haniwa ― 2009年03月16日 09時22分59秒

■ B7様
機械式のレンズシャッターって考えてみれば、大判用以外にはもう用途があまりなさそうですね。そう考えると、ここはコシナが35mmや中判の機械式レンズシャッターの需要を掘り起こして欲しいと思います。困ったときのコシナ頼み(笑)。

わたしもコニカセンチュリア派だったのですが、富士もなるべく使うようにします。富士も南朝忠臣じゃなくて軟調忠実系のネガをもっとお願いしたいですね。

■ WANI様
わたしも中判が気になる今日この頃です。フィルムのスキャンできるフラットベッドスキャナも買ってしまったので、障壁が低くなっています(笑)。本当はSuper Coolscan 9000EDとか欲しいんですが(笑)。

富士は頑張っていますね。わたしもE-6ポジはセンシアとかアスティアを使うのでまだまだ頑張って欲しいと思います。そういえばNatura1600も使ってみないと。これ、ISO1600のまま普通に使うのでよろしいのですよね。

■ ZARDファン様
使命感で作ったけれどもこんな価格にしか出来ませんでした…という感じじゃないでしょうか。たぶん企画したときにはこんなに経済が悪くなると思ってなかったんでしょう。それにKlasseの仕様や価格を見ますと、富士はがんがん売れることなんか考えていなさそうです。おそらくそういう製品をラインナップしていること自体が大事なんじゃないかと思います。

たしかに簡単に買えるような価格じゃないですし、その金額で中古の中判名機が買えますから、微妙なところだと思いますが、こういった蛇腹カメラで安心して使える新品のカメラというのがミソなのだと思います。これがMamiya7とぶつかるようなレンジファインダーだとか、Pentax67とぶつかる一眼レフだったりしないところが考えた結果なんだろうと思います。

わたしも買えたら買ってみたいところですが、ちょっとその金額は無理というのが正直なところです。

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