デジタル一眼レフの視野率(追記あり)2008年08月27日 00時00分00秒

キタイワトビペンギン:Nikon F100、Ai AF Zoom-Nikkor ED 80-200mm F2.8D <NEW>、プログラムAE、スポット測光、Kenko L37 Super PRO、富士フイルム Sensia III(RA3)、Nikon SUPER COLLSCAN 5000ED

写真家・田中希美男氏のブログと、写真家・那和秀峻氏のサイトで、D700の視野率が100%なかったことをきっかけに、デジタル一眼レフの視野率の話が熱く展開されている。
D700の視野率95% ―― その1
D700の視野率95% ―― その2
D700の視野率95% ―― その3
D700の視野率95% ―― その4
D700の視野率95% ―― その5
徒然なるままに2008年8月21日(木)と2008年8月25日(月)の項

田中希美男氏は、D700の視野率95%を非常に残念に思っていて、かつ、やれば100%にできたはずだとニコンを叱咤激励している。

ニコン一眼レフのフランジバックは46.5mmなのに対して、キヤノンのそれはもっとも短い44.0mmである。つまりフランジバックだけを見てみれば、カメラボディ内のメカの配置についてはキヤノンよりニコンのほうが“余裕”があるはず。にもかかわらず、1Ds Mark IIIのゴミ取り(セルフクリーニングセンサーユニット)は撮像センサーの前にある赤外吸収ガラスを高周波振動させる方式にしている。D700はローパスフィルター、1Ds Mark IIIは赤外吸収ガラスの違いはあるにしても、基本的構造も必要となるスペースもそれほど違わないはずだ。
 でも、1Ds Mark IIIは視野率100%だ。セルフクリーニングセンサーの機構も搭載している。

 なぜキヤノンにできてニコンにできないのか、そのへんの事情はぼくにはよくわからない。マウント径の大きさのおかげか(キヤノンのほうがだいぶ大きい)バックフォーカスのせいか、あるいは1Ds Mark IIIには水晶タイプの厚いローパスフィルターではなく極薄のニオブ酸リチュウムのそれを使っているからかもしれないが、ま、それはともかくとして、実際に1Ds Mark IIIでは視野率100%でゴミ取り機構も内蔵しているのだ。キヤノンはエラいではないか。D3は視野率100%だけどゴミ取り機構がない。ゴミ取り機構のあるD700は視野率95%だ。ニコンにはもっとがんばって欲しい…。
D700の視野率95% ―― その3

1Ds Mark IIIは、ゴミ取り機構を内蔵ながら視野率100%であるだけでなく、ファインダー倍率とアイポイント長にも注目したい。視野率100%のD3(こちらはゴミ取り機構なし)のファインダー倍率は「0.7倍」、アイポイント長は「18mm」である。視野率95%のD700のファインダー倍率は「0.72倍」、アイポイント長は「18mm」だ。

対して1Ds Mark IIIはといえば、ファインダー倍率は「0.76倍」、アイポイント長は「20mm」である。くどいようだが1Ds Mark IIIは視野率100%。ファインダー倍率やアイポイント長は数値的にはわずかの違いだけど、文句なしにファインダーは1Ds Mark IIIのほうが“見やすい”。というわけで、ニコンはファインダーまわりのあれこれを、もう少し向上させるべきだし、その努力を惜しまないで欲しいというのが、えんえんとD700視野率95%のハナシをして言いたかったことのもうひとつのこと。
D700の視野率95% ―― その4

アサヒカメラでニコンの人が赤城耕一氏に「アイポイントの関係でファインダー倍率が上げられない」と答えていたのも苦しい言い訳というのがよく分かった(笑)。ただ、倍率が高くなってもファインダーの歪曲が大きくなると使いにくいので、そのあたりニコンとキヤノンとで考え方の違いがあるのかもしれない。ファインダースクリーンの性質についてもそうだ。

話を視野率の方に戻すと、私は前にも書いたが、視野率100%の方がよいに決まっているが、必ずしも100%でなくても92~3%ぐらいでもいいから、ファインダー倍率が高くて、大口径単焦点レンズでピントの山の見えやすいファインダースクリーンを優先して欲しいと思う。ただ、私はフィルムカメラとコンパクトデジタルカメラしか使っていないからそう思うのかもしれない。フィルムはネガの場合プリントすると撮影フォーマットの縦横比と用紙の縦横比が異なるのとネガキャリアの関係から、撮影した画像のすべてをプリントすることは少ない(そういう指定をすればできなくはない)。またリバーサルフィルムも、マウントすれば周囲が隠れるし、スリーブのままでもニコンのフィルムスキャナでは少し周辺がスキャンできない(改造で最周辺部までスキャンは可能だが)。それで、92,3%ぐらいあればなんとかなるのであった(いい加減)。GR DIGITALでは、背部の液晶モニターで100%なので問題ないし、外部ファインダーだと視野率がどうのという以前に撮影範囲がアバウトである。それで視野率100%のF3と視野率92%のF-501、F-301と視野率96%のF100とを混ぜて使ってもあんまり困っていないのであった。もちろん視野率を意識して撮ることはある。F3にネガカラーフィルムを入れているときは周囲に余裕を持たせるとか。

他方、那和秀峻氏は以下のように仰る。

一眼レフの視野率は約100%がたしかに理想である。だが、視野率約100%はノートリング前提、自動プリンタを使わないことが前提、そしてファインダー接眼部を正しい角度で覗くことが前提だ。さらに言えば、カメラが大型化したり、価格が高くなることも了解ずみでなければならない。小型のボディーで、しかも低価格な視野率約100%の一眼レフを要求するのは現時点では無理である。一例だがペンタプリズムは大型化するし、ファインダー光学系(ミラー、スクリーン、ペンタプリズム)とイメージセンサーをぴったり合わせ込むにはコストがかかるからだ。どうしても視野率約100%で、35ミリ判フルサイズで、ある程度小型なボディーで、しかも価格は30万円以下というなら、フィルム一眼レフを使ったほうがいいだろう。イメージセンサーはまだまだ高価で、ましてフルサイズのセンサーのコストはデジタル一眼レフの全体のコストの大きな割合を占めている。だから、ニコンがD700をあの価格で出したのは企画開発がずいぶん苦労したと思うし、D300ベースで作るというアイディアが良かった。視野率約95%が嫌ならD3を買えばいいのであって、第一に視野率は最優先事項ではない。デジタル一眼レフにはほかに優先させるべき項目がたくさんあり、ニコンD700は多くの項目で高い評価を得ているのだ。私なら、D3を2台にするか、あるいはD700を2台にするか、あるいはD3と望遠効果を得るためにD300を併用するか、この中から好きに選べばいいと思う。D3とD700を併用することは避けたほうがいいし、それならむしろD700とD300を併用したほうがましである。いずれにしても、一眼レフファインダーは視野率よりもファインダーの明るさとか、マニュアルフォーカスのやりやすさ(AFでもピントの確認のしやすさ)、表示のわかりやすさのほうが重要であると思う。「視野率至上主義者」には液晶モニタのライブビューでいつも撮影するか、大きさ・重さや価格に文句を言わずにハイエンド機を買うことをおすすめする。

徒然なるままに2008年8月25日(月)の項

わたしも那和氏の意見に賛成である。視野率が100%の方がいいに決まっているが、それよりも前にファインダーでちゃんとピントが見えるようにして欲しい。小型で廉価でファインダーでピントの見えるニコンEMのようなFX機が出たら、もうニコンの天下だ(笑)。もちろん、非CPUレンズで露出計は動くようにしておいてね、ボディ内モーターも省略しないでね(はぁと)。

【追記その2:2008年8月29日】
写真家・阿部秀之氏が田中希美男氏に反論しているようだ。
ニコンD700のファインダー視野率

ニコンD700のファインダー視野率が100%でなかったと、毎日ぼやいているブログがある。D700の視野率が100%でないのは、「D700クラスのユーザーは視野率100%にはそれほど気にしないだろう」とニコンが高を括ったから」でも、「ニコンの優秀な企画担当者のじょうずの手から水が漏れた」わけでも、決してない(笑)

以下(8/28追記分)の田中希美男氏のブログは、この阿部秀之氏の反論掲載後に書かれたものと思われる。
しかし、「降りかかる火の粉は払わねばならぬ。」って、いつから阿部氏はニコンの中の人になったんだ?(笑)

阿部氏の反論は、営業上の理由からなので、わたしはあまり賛成できない。ただ、営業上の理由で視野率100%にしなかった可能性があること自体はそうだと思う。

それにしても、これほどまでに視野率100%にこだわって、95%はダメだというなら、世の中にある一眼レフのほとんどがダメなカメラだと言うことになる。使えるカメラなんて数えるほどしかないだろう。

というあたりは、阿部氏の仰るとおりだと思う。ただ、ファインダーのピントの見えについて阿部氏がきちんと言及していないあたり、赤城耕一氏や那和秀峻氏の方が正直だと思う。阿部氏はなんかメーカー寄りな感じがする。
【追記その2ここまで】

【追記:2008年8月28日】
田中希美男氏のブログに視野率100%の補足と蛇足が掲載された。

老婆心でありますが、「視野率なんぞ適当でイイんだ」、なんてことだけは、大きな声で言わないほうがよろしいですぞ。自分がいかにいい加減にフレーミングして、ぞんざいな構図で写真を撮っているかを公言しているようなもんです。

おお、辛口キター!(笑) でも実際に視野率100%のカメラってそんなにないよねぇ。視野率は適当でいいとは思わないけれども、100%でないカメラも使い込むと見えない周囲があとどれぐらい入るのか、どこまでがL判のプリントに入るのか、自分の使うマウントだとどの辺までなのか分かるようになる。見えない周囲はカメラを振って確認する。そういうことを視野率100%でないカメラを使うときにしてるんじゃないのかなぁ、少なくともプロの人は。田中希美男氏はいつも突っ込まれるのを分かって極論や論理矛盾することをわざと書いているようだから、反応したら思う壺なんだけど(笑)。
【追記ここまで】


写真は記事とは関係ない。
キタイワトビペンギン(※京急油壺マリンパーク):Nikon F100、Ai AF Zoom-Nikkor ED 80-200mm F2.8D <NEW>、プログラムAE、スポット測光、Kenko L37 Super PRO、富士センシアIII(RA3)、Nikon SUPER COLLSCAN 5000ED ※は2020年11月17日追記

視野率96%のF100だ。私がいい加減なのか、100%でなくてもあんまり気にならない。スポット測光でプログラムAEなのは、逆光シーンでスポット測光でマニュアル撮影したあとに戻すのを忘れたからだ。本人はマルチパターン測光で撮っているつもりだった(笑)。ペンギンの顔がはっきりしなくて残念。

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