レンズのピント位置 ― 2008年05月15日 00時00分00秒
デジカメWatchに気になるデジカメ長期リアルタイムレポートニコンD300【第6回】AF微調節の使い方という記事が載った。
デジタル一眼レフユーザーでもないし、D300の購入を検討しているわけでもないが、非常に参考になった。それは「ピント位置」に対するニコンの説明があったからだ。
また、ピントが合っていることを判断するには、コントラストを重視するか解像力を重視するかでも異なってきます。専門的には「周波数の違い」という言葉を使いますが、細かなものと大きく粗いものとでは、ベストなピント位置がほんの少しではありますがズレることがあります。被写体をクッキリとさせたいか、細かなものを緻密に撮りたいかは好みが分かれると思います。両方同じピント位置であればよいのですが、至近距離ではそうでないレンズもあります。
ですから、至近距離での新聞の文字や定規の目盛りなどを撮影すると、それらが像面上でどのぐらいの細かさなのかによって、ピント位置が変ってきます。ところが遠距離ではそのような細かい被写体と粗い被写体でのピント位置がほぼ変らないため、近距離の「ある細かさ」の被写体でのピント位置でAF微調節を行うなと遠距離でかえってずれてしまうのです。
──デフォルトのピントはどういうふうに決められているのですか?
弊社の長い経験から導かれたピント位置の定義を基本としていますが、最終的には多くの実写などを元にして、設計者と品質保証の担当者で決めています。通常の使用状況であれば、コントラスト重視の場合も、解像力重視での場合もほぼ同じピント位置になるように設計/製造されています。特にAF微調節を行なわなくてもご満足いただける製品となっています。
なるほど、コントラスト重視の場合のピント位置と解像力重視の場合のピント位置が異なることがある、と。そういえば、以前、京セラのPlanar T* 50mm F1.4をアサヒカメラのニューフェース診断室で診断して、コントラスト減少率(MTF)が一部で基準を下回っていたということがあった(アサヒカメラ1994年10月号、「アサヒカメラニューフェース診断室 コンタックスの軌跡」2001年発行に再録)。結局再測定して、「コントラストの最良点の判定においてピークが2つあり、低い方のピークを読みとった結果かもしれません。しかし、推測の域はでません。」となった(*)。こちらの場合はコントラスト重視の場合でもレンズによってはピークが2つあるということだった。そうすると解像力重視のピークがさらに別にあれば、もうどこが「ピント位置」なのかさらに分からなくなりそうだ。
*【追記:2008年5月16日】以上の説明は京セラとツァイス・ジャパンの立場で、ニューフェース診断室ドクター(小倉磐夫・近藤英樹・田沼武能・深堀和良の各氏)とアサヒカメラ編集部の見解は「軸上コントラストの最大値ではない極大値をとらえたことによるのではないか」つまり最良コントラストのピント位置と最良解像力のピント位置が異なるためだと言っている。
【追記ここまで】
「通常の使用状況であれば、コントラスト重視の場合も、解像力重視での場合もほぼ同じピント位置になるように設計/製造されています。」とのことだが、極限状態では微妙に違う、と。
そういえば、ニコン唯一のソフトフォーカスレンズ、「おもしろレンズ工房ふわっとソフト(Soft 90mm F4.8)」なのだが、ファインダースクリーン上でみてもどこにピントがあるのか分からないときがある。マット面でのピント位置とスプリットプリズムでのピント位置とマイクロプリズムでのピント位置とがなんか違うのである。また、マット面でも従来型のF3やF-501/F-301用のマット面とFM3A用のマット面でもピント位置が違うように思える。これはこのレンズの球面収差が非常に大きいので、F値によってピント位置が大きく変わるためなのだろう。スクリーンのマット面とスプリットプリズムとでは、ピント合わせに使う光束の大きさが異なるようで、スプリットプリズムだとF4.5までしか使っていないとかマイクロプリズムだとF8までしか使ってないといった違いがあるのだ(スクリーンによって違う)。
それでふわっとソフト(Soft 90mm F4.8)のピント合わせなのだが、マット面でのピークとおぼしきところに合わせるようにしている。まあずれていたとしてもふわっとした描写なのでよく分からないのだが(笑)。
今回の長期リアルタイムレポートは、ニコンにインタビューしてくれたところが非常によかった。そして、ニコンが「しつこいようですが、基本的にはなくてもよい機能と考えております。」と言っているところもこだわりがあっていいなぁ(笑)。きっと営業サイドから強く求められて技術陣とで確執があったんだろうなぁ。そこでこの文句ですよ、「ニコンに限っては、それは許されない」。「ニコンに限っては、そんな機能は必要ない」と(笑)。
写真は記事とは関係ない。
主制御器:GR DIGITAL、28mm相当、F2.4開放、1/30sec、ISO154、-0.3EV、プログラムAE
「鉄」な写真だが、カバーの材質は真鍮のようだ(笑)。使い込んで塗装の禿げたところが金色に光っているとかっこいいとおもうのだが、これは保存物なのでちょっと物足りない。ピカールで磨きたいところだ(笑)。時々ビルの金色の消火栓を掃除の人がピカールで磨いているのを見るとうれしくなってしまう(笑)。
コメント
_ ぱぱさん883 ― 2008年05月15日 13時02分59秒
_ やまろ@会社 ― 2008年05月15日 13時15分56秒
個人レベルで厳密な調整って難しいかも知れませんね。めったに使わない保険みたいな機能なんでしょうね。
鉄な写真を見て地元の函館市電を思い出しました。
大正時代の車両が現役だったりします。
_ Haniwa ― 2008年05月15日 14時55分43秒
>実際にここまでナーバスに調整するユーザーはいるのでしょうか
こういう機能があれば使ってみたくなるのが人情です(笑)。簡単にモニターで等倍鑑賞ができますから、使う人も多いと思います。あと、サードパーティ製レンズで効果的かもしれませんね。ニコンとは基準が違う可能性がありますから。
やまろ様
詳しく説明されないと定規でやりますよね。説明書にデジカメWatchのような説明を載せないとかえってピントがあやしくなったりしそうです。
>鉄な写真を見て地元の函館市電を思い出しました
路面電車、いいですよね。
各地の路面電車をなくしてしまったのは惜しいことをしたと思います。でも廃止当時の写真を見るといまでは想像もできないくらいの交通渋滞と排気ガスですね。当時の状況からしたら廃止もやむを得なかったのかもしれません。函館市電や都電荒川線など、残っている路面電車は末永く走って欲しいものです。
富山ライトレールのような新規のLRTももう一度都会で考え直してもいいと思います。それだとゼネコンが儲からないから駄目なのでしょうか(笑)。
_ BTB ― 2008年05月15日 23時15分24秒
球面収差のせいで合焦していると「思われる」被写界深度が、絞ってもないのに深いイメージです(普通のレンズに比べたらピークでもゆるいですけど^^;)。
そのため特にあまり明るくないレンズである45mmの方は特に、ノーフォーカシングで擬似パンフォーカス的に撮影するのに重宝したりも。フォーカス合わせのタイムラグゼロはやはりなかなかよいです。
個人的にはニコンDCレンズ(ソフトレンズ的にも使える)やキヤノンソフトレンズは、次期ディスコンの絶滅危惧種候補だと思い、早々に手には入れたいのですが、なかなか手が回っていないのが現状だったりします(滝汗)
_ BTB ― 2008年05月15日 23時19分50秒
kenko soft 85mm はF2.8ではなくて、f2.5です。
見直し不足でした…
_ BTB ― 2008年05月15日 23時28分52秒
kenkosoft 45mmもf4ではなくて、F4.5でした。
失礼いたしました…
_ Haniwa ― 2008年05月16日 08時43分14秒
コメントありがとうございます。コメントの連投はお気になさらずに。気づかれているのにそのままというのもなんですので、修正された方が他の方の情報にもなりますし。
ソフトフォーカスレンズ、奥が深いようで、沼に踏み込まないように注意しています(笑)。
ソフトフォーカスレンズのほとんどが、球面収差がマイナス側に残っているのに対して、タンバールだけはプラス側に残してあるそうです。これを任意にプラス/マイナスに動かせるのがDCニッコールですよね。ただ、球面収差の量が、他のソフトフォーカスレンズほどはないようですが。わたしもAi AF DC-Nikkor 135mm F2Dは気になりつつも買えないままでいるレンズの一つです。たしかに絶滅危惧種です。
関係ないですが、このあいだ銀座でAi AF Nikkor 28mm F1.4Dが35万7千円で売られていて目が点になりました。15万ぐらいの時に5本ぐらい仕入れておけば…(笑)。
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実際にここまでナーバスに調整するユーザーはいるのでしょうか・・。
すごいレベルの撮影ですね。